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引越業者がつかまらない!単身なのにウン十万円? | 引越業者がつかまらない!単身なのにウン十万円?「引っ越し難民」問題について、引越会社3社を集めて議論してみた

●ベテランの引っ越しマスターが集結

今回、ご参加いただく引越会社は以下のみなさんである。

【アート引越センター】

1977年設立。全国に3500台以上の車両を保有する、業界最大手のひとつ。「ゼロイチニーサ~ン♪」のコマーシャルでもおなじみ。なお、主にお話いただく木造一弥さん(不動産法人営業部法人営業2課課長 ※写真右)は、この道30年のベテラン。

【トレファク引越】

全国に100店舗以上のリユースショップを展開する「トレジャーファクトリー」の引越サービス。トラックや引越専門スタッフを自社で持たず、日本全国の引越会社と提携し、「引越+買取+処分」をワンストップで提供している。今回お話いただくのは本間英一郎さん(トレファク引越グループ品質管理マネージャー ※写真左)。この道30年のベテラン。

【ファイン引越サービス】

1993年の創業以来、不動産会社からの紹介を中心に着実に顧客を増やし、今では北海道、東北、関東、東海、関西、中国、九州にネットワークを持つ。2019年、関東地区のサービス網拡充に伴い、東京支店を新規開設。お話いただくのは福井睦樹さん(取締役社長 ※写真奥)。この道30年のベテラン。

いずれも、この道30年のベテランをアサインしてくれる気合の入りようで、じつに頼もしい。さっそくお話を伺っていこう。

●ドライバー不足でトラックが余る? 引っ越し難民を生む、業界の深刻な人手不足


―― 昨年、一昨年と、3月から4月にかけて「引っ越し難民」のニュースが報じられています。まずは、このことについて皆さんの見解をお伺いしたいです。

トレファク引越(以下、トレファク):確かにここ2年、マスコミの報道で「引っ越し難民」という言葉を耳にするようになりました。ただ、実際に3月・4月の繁忙期が終わった後に数十社の契約引越会社に話を聞いてみたのですが、正直なところ世間で言われているほど引っ越し難民と呼ばれる方が多い印象はなかったですね。


―― 例年の繁忙期と、あまり変わらなかったということですか?

トレファク:はい。そもそも3月の月末は必ず混み合うので、各社さんの方でトラックの台数などに少し余裕を持たせておくんです。それは、企業の急な転勤などにも対応できるように。しかし、今年はその車が埋まらなかったという話も聞いています。
ただ、一方で繁忙期の引っ越し料金が高騰していることも事実で、我々としても常々この点に問題意識を持っています。そのあたりは、後ほどお話できればと思います。


―― もしかしたら、報道から受けるイメージと実際の現場で起きていることに、ギャップがあるのでしょうか?

アート引越センター(以下、アート):近年言われている引っ越し難民について、マスコミ先行のイメージがあることは確かだと思います。まず、そもそもの前提として3月4月は引っ越しの繁忙期で、どうしてもそこでのお引越しをご希望される場合、単価は上がります。また、この時期はどの業者も手一杯で、希望日になかなか頼めない。これも、ここ2年に限ったことではありません。お客様のなかにはそれを見越して、初めから業者には頼らず自分たちで運んでしまう人も多いわけです。
ただ、先ほどトレファク様がおっしゃったように、繁忙期の高騰……というより、「繁忙期以外との価格差」というべきかもしれませんが、改善すべき点があるのも事実ですね。


―― アートさん、トレファクさんはほぼ同じ見解のようですが、ファインさんはいかがでしょうか?

ファイン引越サービス(ファイン):私の感覚は二社さんと違っていて、確かにここ2年、引っ越し難民と呼ばれるような方はかなり増えたと思っています。うちは小規模ですので、おそらく引っ越し難民が最後にたどり着くところだと思うんです。最初は大手に頼もうとしたけど空きがなく、次に中堅に電話しても駄目で、最後に僕らのところへ駆け込んでくる。
ですからアートさんやトレファクさんよりも、より切実なお客様の事情を実感しやすいのだと思います。どちらが良い悪いではなく、業界の構造の問題です。通常の繁忙期でも、やはり大手から先に埋まっていきますからね。


―― 実際、困り果ててファインさんのところへ駈け込んでくるようなお客さんも多かったのでしょうか?

ファイン:すごく多かったですね。引越業者に頼めなかった方が自分でやろうと思っても、レンタカーも大手を含めどこもいっぱい。仕方なく、冷凍車や保冷車を借りる人もいたようですから。

 


―― なぜそうした状況になってしまったのでしょうか?

ファイン:最も大きいのは引越業界全体の人手不足。特にドライバーさんが足りていません。働き方改革や、そもそも引越業界に人が集まりづらくなっているなど様々な背景があるのですが、それはここ2年に限った話ではなく、もっと以前から我々が抱えている課題です。
トレファク:確かに、トラックはあるけど運転手が集まらないという話は、提携先の会社さんが口々におっしゃっていますね。

●単身・都内の引っ越しで数十万円も……! 3月の引越代が高騰するワケ


―― 先ほど、繁忙期の価格があまりにも高騰しているというお話がありました。実際、どれくらい上がっているのでしょうか?

ファイン:我々はここ2年、引っ越し難民と呼ばれる方々の声をたくさん聴いてきましたが、なかには単身かつ東京都内間の引っ越しで30万や50万と言われたなんてケースもありました。
トレファク:この時期はどの会社も高単価ですが、最近はやりすぎが非常に目立ちますね。せいぜい、平常期の3倍くらいが適正でしょう。それをゆうに超える異常な高騰については、業界の健全な発展を考えるといかがなものかと思います。お客さんも、どんどん離れてしまいますよね。


―― しかし、価格が高騰してしまう背景には、この時期になるべく稼いでおきたいという引越会社の事情もあるわけですよね。

ファイン:そうですね。引越会社はいかに3月4月の繁忙期で稼ぎ、それ以外の月のマイナスを抑えるかが勝負。春先の短い期間でいかに蓄えを作れるかで、通常期・閑散期を食いつないでいるのが実情です。ですから、高単価が見込める繁忙期がなくなってしまうのは、それはそれで業界として成り立たなくなってしまうのではないでしょうか。
※参考:総務省統計局『平成30年 住民基本台帳人口移動報告』

 

トレファク:繁忙期が高騰してしまう裏には、平常期の価格が下落しすぎているという問題があります。だから、3月4月に稼がないと会社が潰れてしまう。ここを適正化していかないと、なかなか今の状況は変わらないのではないかと思います。


―― なるほど……。アートさんはどのようにお考えでしょうか?

アート:まさに、皆さんがおっしゃった通りだと思います。これは私が会社に入った30年前から言われていることですが、引越業界の永遠の課題は「平準化」であると。つまり、月ごとの忙しさや売上の波をなくし、いかに均等にしていくかがやはり重要なのだと思います。


―― ちなみに繁忙期以外の単価って、そんなに下がっているのでしょうか?

アート:私の感覚では、20年前に比べ平均単価が10万円くらい下がっています。これには様々な要因があります。たとえば、住まいにクローゼットなどの収納が増え、タンスなどの大きな家財道具が減ったこと。また、核家族化や単身世帯が増えたこと。さらには、ある時期に引越業者間で激しい価格競争が起きたことなどです。
ただ、引っ越しにかかる経費は積み上げ方式で、人件費がいくら、トラック代がいくらと決まっていますので、安くするにも限界がある。しかし、特に平常期については、その限界を超える価格破壊が起きている状況ではないかと思います。


―― だからといって、引越会社が足並みを揃えて価格協定を結ぶわけにもいきませんよね。本当は、春に転居が集中する社会構造自体を変えられたらいいんでしょうけど……。

アート:現状では難しいですね。我々からお願いできるとすれば、どうしても事情がある場合を除き、3月末のピーク時の引っ越しはなるべく避けていただくことでしょうか。
ただ、じつは弊社でも平準化のための取り組みは進めています。たとえば、弊社は法人契約のお客様が多いのですが、契約企業様に対し「転勤の時期を分散していただく」などの働きかけをしてきました。


―― 企業の反応はいかがでしょうか?

アート:特にここ数年はご理解いただき、ご協力いただけるようになっています。実際の動きとして、3月の転勤はできる限り減らすという企業様も出てきていますから。やはり、あれだけ引っ越し難民の問題が報じられたことで、業界の厳しい実情を分かっていただけるようになったのではないでしょうか。

●かつては60連勤も! 引越業界でも進む働き方改革


―― 先ほど、業界全体の人手不足が深刻化しているというお話がありました。そして、その背景には働き方改革の影響もあると。働き方改革で長時間労働が是正されるのは望ましいですし、そうあるべきですが、一方で繁忙期の引っ越しは残業や長時間勤務によって成り立っていた部分もあるわけですよね。

ファイン:正直、そうした側面はあります。昔は本当に激務でしたから。それこそ私が毎日現場に出ていた30年前は、3月・4月まるまる60連勤なんてこともありました。二か月ぶっ通しで働き、給料とは別に10万円の報奨金を貰う、そんな時代でした。
トレファク:あの頃は1日に詰め込めるだけ詰め込むのが当たり前でしたよね。夜中の0時過ぎまで引っ越し作業をするのも普通でしたし、そのまま事務所で仮眠をとって、また朝から出ていった。良い悪いではなく、それが事実なんです。


―― アートさんは、ピーク時どれくらいの件数をこなしていたのでしょうか?

アート:かつては大きい店舗だと1日最大100件を超える引っ越しをやっていた時期もあります。1チームあたり1日3~5件くらいですね。トレファク様がおっしゃったように、夜遅くにお客様のところへ伺い、それから引っ越し作業をしたこともあります。
もちろん、やればやるだけ給料がもらえましたし、それを目当てに頑張っている人もいましたが、さすがに今はそんなことが通用するはずもありません。引っ越し業界も、ここ10年でかなり健全な働き方にシフトしていると思います。


―― ただ、それによって引越会社のキャパが減り、引っ越し難民という問題が出てきた。人手不足を解消するために、どのような取り組みを進めていますか?

アート:以前から、人を集めやすくするために各地域にサテライトセンターを設けるなどの取り組みは進めてまいりました。ただ、もっと根本的な部分を変えていかないと本当の解決には至りません。
ファイン:そうなんですよね。直近の繁忙期対策ということでいえば、どの会社もすでにやれることはやっている。ただ、たとえば人を確保するために時給1500円を1800円に上げるとかっていうのは、所詮その場しのぎの対策ですよね。アートさんがおっしゃるように、もっと根っこを変えないといけない。

●慢性的な人手不足を解消し、引っ越し難民を救うには?


―― では、どこをどう変えれば慢性的な人手不足を解消できるのでしょうか? それが、ひいては「引っ越し難民を救うこと」にもつながると思うのですが。

アート:どこを変えるというよりも、基本に立ち返ることだと思います。やはり、引越業界で働きたいと思う人を少しでも増やすこと。そして、若い人をしっかりと育成し、定着させていくこと。そうやって業界全体を底上げし、引っ越しの質を保ちながら全体の件数を増やしていく。これに尽きると思います。
トレファク:私も同じ意見です。それには働き方もそうですし、何より引っ越し業界で働くことの楽しさを知ってもらう必要がある。引っ越しは「辛い仕事」というイメージがあるかもしれません。もちろん、肉体的にきついことはあります。それでも、私が引っ越しの現場に出ていた頃を思い返すと、当時は本当に楽しかった。そして、きれいごとではなく、目の前のお客様から感謝のお言葉をいただくことが働くエネルギーになりました。
ファイン:そうなんですよね。私も現場は楽しかった。引っ越し作業が終わって自宅に戻ると、達成感がありました。どんなに疲れていても、夜に窓を開けたら爽快な気分でしたよ。


―― そうした仕事の魅力を、若い従業員の方に伝えていくことも大事ですね。

ファイン:そう思います。うちは社長の私と現場の距離が近いので、入ったばかりのアルバイトの子にも直接伝えるようにしています。
アート:今の若い人は、仕事でお客様に感謝された経験が少ないように思います。おそらく、どうすれば心から「ありがとう」と言っていただけるのか分からないところもあるのではないでしょうか。
アート:ただ、それってじつは単純なことで、たとえば「帽子をしっかりかぶって、作業前にきちんと挨拶をする」。それだけで、お客様から会社にお褒めの言葉をいただけたりするんです。そうした声を、リーダーを通じてしっかり引っ越しのスタッフにフィードバックし、やりがいや喜びを感じてもらう。一つひとつ、そんなことを地道に繰り返していくしかないのかなと思いますね。


―― 皆さんのお話を伺い、引っ越し難民が生まれる背景には様々な事情があり、一朝一夕には解決できない問題だということがよく分かりました。そして、同時に業界全体でこれまでの働き方を見直しつつ、引っ越しの質と量を保つための取り組みを進めていることも。

「Relife mode」の読者が引っ越し難民にならないためにも、業界の健全な発展を願っております。本日はありがとうございました。

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